科学未来タイムズ

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第二回 宇宙旅行はゴミムシダマシとともに

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昨年『ホリエモンロケット』として民間企業がロケットを打ち上げたことが話題になり、「一般人が宇宙旅行に行くのもそう遠くないのでは?」と宇宙を身近に感じた人も多いだろう。実際、2020年代には宇宙旅行が、2040年には月面旅行が可能だと言われている。

そんな宇宙へと行く機会が増える今、とある昆虫が注目されている。

それが『コブゴミムシダマシ』だ。

この見るからに可哀想な名前の虫が、近い将来私たちを安全に宇宙へと連れて行ってくれるかもしれない。

 『コブゴミムシダマシ』は北米に生息する甲虫で体長は約5mm、オークの木に生息している。見た目はどこにでもいそうな虫だが、驚くべき力を持っている。

それはその圧倒的な頑丈さだ。

この虫の持つ外骨格は、非常に頑丈で並大抵の圧力ではびくともしない。鳥の鋭い爪で攻撃されてもまず効かないし、車に轢かれたたとしても無傷。標本にするときも鋼鉄製のピンが体に刺さらないためテープで留めるしかない。

カルフォルニア大学のDavid Kisailus教授は論文でこの虫が最大149Nの圧力に耐えることを明らかにした。わかりやすく言うと、だいたいボーリングの玉3個の下敷きになっても生きている。名前に似合わないタフさ。小さい体の中にハードボイルドを感じる。

 さらにこの教授は、『コブゴミムシダマシ』の頑丈さに外殻の特殊な構造が関係していることを発見した。実は『コブゴミムシダマシ』は頑丈さを極めるあまり羽が退化し開かない。この右と左の羽が中心でジグソーピースのように細かくかみ合い重なる構造が羽を中心でつなげ、外骨格を強化していることを解明した。

将来的にはこの構造を金属とプラスチックのような異なる材料を頑丈につなぐことに応用できると期待されている。

異種材料の接合はタービンなどに求められている技術なので、近い未来この構造が使われた航空機、ロケットが作られるかもしれない。

 もしあなたが宇宙旅行にいく機会があればぜひ思い出してほしい、

『小さな虫の生きるための知恵が巨大なロケットを支えている。』と。

満天の星空もよりロマンティックに見えるに違いない。

 

Writer 嶋貫

 

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